第29話【江戸前の釣り/シーズン2「寒たなご釣り」-矢竹並継竿について(その弍)-】


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この回では、矢竹並継たなご竿についてご説明していますが、矢竹たなご竿の仕様について
少し詳しくご説明致します。

まずは継方法による分類です。大きく並継と印籠継に分けられます。
矢竹で印籠?と思われる方がおられると思いますが、印籠継は布袋だけの継方法ではありません。
たなご竿や小鮒/真鮒竿でも、多くはありませんが矢竹で、印籠継独特の調子を求めて製作されています。
逆に、総布袋竹を使って並継で竿は製作しません(鯊竿における布袋穂先と矢竹穂持ち唯一並継 です)

使う仕掛け(釣り方)によってしもり竿と脈竿に分けられます。
しもり竿の切寸法は前回でご紹介しましたが。基本は8寸/尺切です。
共通する仕様は継方法/長さに関係なく、穂先は矢竹古竹削穂(江戸弁で削りっぽ?)がしもり竿のお作法です。
この削りっぽ、穂先の削り具合で江戸和竿師の技量を見ることが出来ます。

そして、脈竿ですが、先調子を出すために切寸法(仕舞寸法)を短くし、5寸/6寸切が標準になります。
穂先素材は竹では無く、鯨の髭を使います。
鯨の種類としては繊維が細い背美鯨の髭を使います。
他に鰯鯨、白長須鯨がありますが鰯鯨は繊維が太く、白長須鯨は乾燥した髭の中に洲(す/気泡跡)がある為、何も脈釣り竿の穂先材には使いません。
背美鯨は繊維が細いため、しなやかで調子が出やすい特徴があり、脈釣りには最適です。
たなご以外にも鱚や皮剥竿でも使われる材料です。
そして、鯨穂先の特徴は矢竹を噛ますことです。鯨だけで穂先一本を製作することはまずありません。
強度がなく、柔らかすぎるからです、基本の作りは、必ず一節入っている矢竹を噛ませて、穂持ちとの維ぎは竹にします。
短く、比較的強い調子の場合は、矢竹ではなく矢竹古竹を噛ませることもあります。

穂持ちについて
たなご竿に限った話ではありませんが、素材(竹/カーボン/グラス等)/継方法(並継/印籠継/振出し等)、長さを問わず、釣り竿は全て穂持ちに一番力が掛かります。
そしてその穂持の特徴/性質で竿の調子が決まりますので非常に重要です。
特に短い竿の場合、穂持ちの良し悪しがそのまま、竿の良し悪しに直結します。
江戸和竿も同じです。
特に並継のたなご竿、小鮒竿は穂持ちで決まると言っても過言ではありません。
動画で紹介している正勇作8寸切矢竹並継5本継に、よくその特徴が出ています。
江戸和竿師はこの細身の穂持ち材を探すのに苦労するのです。
関西へら竿の高野竹、江戸和竿たなご竿の八王子竹が穂持ち材として使われていました。
残念ながら、江戸和竿においての八王子竹は全く取れず、現在は同仕様/機能を有する矢竹古竹を使用しています。