第7話【江戸前鯊釣り -小粋な小道具たち-】


(12分38秒)

今回は、鯊釣りの小粋な道具について解説しています。
今回も、いろいろと用語が出てきます。動画の途中に、テロップとして表示を出しますが、その意味については以下を参照ください。

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① 合財箱
主にたなご釣りで使われ、上蓋に座布団(クッション)が固定されている木製の道具箱を云います。
古くから使われているものではなく、元々はへら釣りで使われていた道具箱を転用し、座れるように座布団をつけたものが原型のようです。
特に、たなご釣りに使われる道具類は竿も含め小さいので、全て、「一切合財」を入れる箱という意味で「合財箱」と呼ばれています。
他店では「合切箱」と表記していますが、当店では先代の頃より「切」を嫌い、大事な道具を意味する「財」を使っています。
箱自体が重いと、取扱いが面倒なので、素材は軽い桐材、もしくは職人が入手し易かった赤松材が多く使われています。

当店では、この合財箱を鯊の道具箱として流用するのではなく、材料/仕様を変更して、鯊つり専用の道具箱【鯊箱】として企画、製作致しました。至る所に江戸指物師の技・遊び心が見られます。

② 竿掛け
現在の竿掛けは、第一精工社製をはじめ多くの製品がリール付竿対応で、しっかりとした作りになっています。
リールを取り付けない鯊竿に限って言えば、これらの製品は使い勝手が必ずしも良くありません。
動画で紹介して竿掛けは、西北社というところで製作されていた、ほぼ和竿専用と言っていい、構造がシンプルでつり人の目線で作られた竿掛けです。そして鯊・鱚釣りを意識して竿掛けで一対仕様がありました。
糸掛けが左右で異なった付け方をしています。
サイズは3種類、当店にはいずれも一対仕様を展示しています(非売品)
既に西北社は廃業していますのでこれを入手することは出来ません。
そこまで拘った竿掛けなので、職人と話をしてこれに相応しい納袋を製作して貰いました。これも動画で紹介しておりますが、足袋と同じ縫い目を見せない袋縫いで内部に竿掛けがぶつからないように仕切りを設けた木綿製の納袋です。ここにも職人の知恵があります。

③ 糸付鈎納箱
従来は結んだ鈎を、カットしたフエルトの上に置いて、薄いビニールシート で挟んで抑えるという鈎ケースを製作していました。
このケースでは、鈎先がフエルトに引っ掛かるという欠点がありましたが、「糸付鈎納箱」では鈎を置く部分がマグネットのため引っ掛かりません。
鈎素の長さに合わせて4種類取り揃えました。
たなご用に製作しましたが、小生は夏鯊(鈎素5cm)や彼岸鯊(鈎素7cm)で使用しています。

④ 船用餌箱
一対2本竿用と一本竿用がありますが、いずれも竿掛けを使って、船縁に取り付けられている垂木に固定します。
動画の餌箱は、江戸指物師「箱幸」が製作した一対竿用餌箱です。
垂木に固定する餌箱側の左右2枚の横板は餌箱の底に収納出来ます。
内部には切った餌を置く小皿がついています。
紐付き握り鋏は紐をつけて餌箱脇の金具に引っ掛けることが出来ます。
銘木を使い、本漆で仕上げた餌箱は、江戸前鯊釣りでは江戸和竿を引き立てる名脇役になっています。

⑤ 糸通し/さらい納箱(2面仕様)
これも江戸指物師「箱幸」と袋物職人との三人のコラボで企画/製作した、遊び心溢れる小粋な逸品です。
カーボン中通しでも糸通しのワイヤーは必需品です。和竿の場合には、さらに穂先先端のゴミ詰まりを解消するために、「さらい」と呼ばれる鋼製の極細のやすりを使用します。
常時使うものではないのですが、いずれも1.5m前後ありますので、丸めて保管するのですが、保管状態が悪いと曲がったり、折れたりします。
一般的には小さな紙袋や、CDケースを流用されているようですが、小粋とは程遠い状況でした。
そこで製作したのがこの納箱です。終端を気にすることなく、小さめに丸め て箱の中に入れるだけです。そしてこれに相応しい鯊柄で正面の柄を合せた納袋をセットにしました。

【YouTube 「大塚 関釣具店チャンネル」】

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